
2022.03.16
広島市を走るアストラムラインとは?中区紙屋町へ直通の便利路線
広島の街
人口120万人に迫る大都市でありながら、実は都市部から郊外への鉄道路線が極端に少ない広島市。市を東西に横切るJR山陽本線の沿線のエリアを除くと、単線の電車やディーゼル車、路面電車を利用する必要があります。
今回は、そんな広島市で1994年に開業した複線の新交通システム「アストラムライン(正式名:広島高速交通広島新交通1号線)」について、その特徴と魅力を見ていきましょう。
1994年に開業した比較的新しい路線

アストラムラインは当初、広島市中心部と広島市北西部(安佐南区・あさみなみく)の住宅団地を結ぶ公共交通として建設が進められていました。
元々、広島市中心部から安佐南区の長楽寺駅(ちょうらくじえき)までを結ぶ予定でしたが、1994年10月の広島アジア大会の開催決定を受け、アジア大会のメインスタジアム・広島広域公園陸上競技場(現・エディオンスタジアム広島)へのアクセス路線として延伸が決定。
その結果、長楽寺から広域公園前までの区間も着工され、1994年8月20日、本通駅(ほんどおりえき)〜広域公園前駅(こういきこうえんまええき)の18.4kmの区間が同時に開業しました。
アストラムラインの路線図

アストラムラインの路線図はこのようになっています(山吹色の部分)。広島市中心部と安佐南区の広域公園前を結んでおり、山を迂回するように曲線を描いています。2022年現在、22の駅があります。
沿線の街並み
本通・紙屋町周辺


アストラムラインの市街地側の端のエリアは、広島市の政治・経済の中心地。オフィスビルやデパートなどが立ち並ぶ都会的な場所です。アストラムラインの路線の大部分は道路の中心に設けられた高架になっていますが、本通駅から新白島駅(しんはくしまえき)までの約1.7kmは地下鉄となっています。

終点「本通駅」から降りてすぐの場所にある「広島本通商店街」は、さまざまな商店が軒を連ねる長さ577mの商店街。商店街は全てアーケードで覆われています。ファッションやグルメを楽しめる、広島の人気観光スポットとなっています。
白島周辺


広島市の中心部から北に2kmほどの位置にある白島エリアは、広島市の都心の高級住宅街として有名なエリアです。住宅街といっても、大通り沿いはオフィスビルや飲食店も多く、交通量も多く、中心街の一部といった印象。

大通りから街の中に入ると低層の集合住宅や戸建て住宅が増え始め、静かな住宅街らしい街並みが広がっています。川沿いにはお散歩やジョギングが捗りそうな美しい遊歩道があります。
2015年の「新白島駅」開業により飛躍的に便利に
白島エリアは、このアストラムラインとJR山陽本線が交差している場所。しかし、1994年の開業時点から2015年まで、交差しているにも関わらず連絡駅がない状態になっていました。そのため、アストラムライン沿線に住む人が広島駅や横川駅(よこがわ)などの山陽本線の駅にアクセスする際、バスや路面電車を乗り継ぐ必要があったのです。

牛田周辺


白島から京橋川(きょうばしがわ)を渡った北に位置する牛田エリア。こちらも白島と同様に、古くからの高級住宅街として有名なエリアです。元々、広島市中心部への公共交通はバスが主流だったこの地域ですが、現在では沿線の多くの人がアストラムラインを通勤・通学に利用しています。

白島と同様、牛田の川沿いにも見事な風景を楽しめる遊歩道があります。
西原・大町周辺


牛田から祇園新橋(ぎおんしんばし)を渡った先に位置する、安佐南区の平地エリア。平坦な土地が多く、イオンモールやドン・キホーテなどのお店も充実しており、現在人気上昇中の住宅街です。

アストラムラインに加えて、西側をJR可部線(かべせん)が並走しているため、広島市の中では公共交通機関が非常に充実したエリアと言えるでしょう。特に、アストラムラインとJR可部線が連絡する「大町駅」付近は、広島市中心部や北部、北東部へのアクセスがとても便利な場所になっています。
長楽寺周辺


安佐南区の平野部を抜けると、アストラムラインは安川(やすかわ)沿いの山間部のエリアを進んでいきます。この地域は、まるでアストラムラインの通る県道38号線・同71号線を中心に、左右の山肌に沿って住宅街が造成されています。住宅団地からアストラムラインの駅へと連絡するバス路線が運行されている団地もあります。
このエリアでは、平地では味わうことのできない緑豊かな自然を味わうことができます。広島市中心部までは、アストラムラインを利用しておよそ27分(長楽寺駅から本通駅まで、一例)となっており、通勤時間としてはまずまずの時間と言えるでしょう。
広域公園(西風新都)周辺


1994年に開催された広島アジア大会の主な競技場が集中する広域公園前周辺。大会のメインスタジアムは、現在は地元サッカーチームの「サンフレッチェ広島」の本拠地「エディオンスタジアム広島」として活用されています。

また、この一帯は「ひろしま西風新都」と名付けられ、広島市の新たな副都心となるべく開発が進められている一帯。今後も計画的に開発が進められていくことが予想されています。
アストラムラインの現在の終点「広域公園前」から、広島市の中心部まではおよそ40分弱。アストラムラインは通勤の足として使えないことはありませんが、安佐南区の山を迂回する大回りなルートとなるため、広島高速4号線を通るバスを利用するという方法もあります。
2030年ごろまでに延伸予定!

路線図のように、アストラムラインは広島市中心部から西風新都までを大きな曲線を描いて結んでいる状態であり、広域公園側は他の鉄道との接続がない状態です。実は、2030年ごろを目処に、広域公園から南へと延伸し、JRの西広島駅と接続する延伸計画が進められています(赤点線で示した部分)。
この延伸計画では、佐伯区五月が丘や、アウトレットモールのある石内東開発団地付近を経由、6つの新駅が新設されることになっています。延伸によってJR路線と接続されることにより、西風新都付近や佐伯区五月が丘周辺の交通利便性が格段に上がることが期待されています。
1994年の開業以来、元号を跨いで進化を続ける未来の路線・アストラムライン。広島で家を借りたり、建てたりする際は、交通渋滞による遅延のないアストラムライン沿線を検討してみてはいかがでしょうか。
アストラムラインを動画で見る(約6分)