2019.09.19

格安には理由がある…リゾートマンションのリスクについて

暮らしのQ&A

1980年代末から1990年代初頭にかけ、日本はバブル景気と呼ばれる空前の好景気でした。その際、スキー場や温泉街、避暑地、ビーチ沿いに次々と建てられたのが、「リゾートマンション」と呼ばれるマンション。リゾートホテルとは異なり、リゾートを訪問した際に居住するいわゆる「別荘」がマンションとなっている物件のことです。

バブル期当時は、好景気でリゾート地に赴く人が大勢いたために需要があり、当時は通常の居住用マンションと同程度の数千万円で取引されていたリゾートマンション。しかし、景気が後退した今は、信じられないような安値で売りに出されているのです。まるで賃貸マンションに住むような値段でかつての高級マンションを購入できると聞くと、魅力を感じる方も多いかもしれません。

しかし、安いものには当然理由があります。今回は、リゾートマンションが今格安になっている理由と、購入した際のリスクを取り上げていきます。

築28年の2LDKが10万円の衝撃

新潟県にあるスキー場の町として有名な越後湯沢。新潟県選出の田中角栄首相の時代、新潟新幹線が開通すると、この雪深い山間部に新幹線の駅が作られました。

そして人口わずか9000人ほどの湯沢町に、バブル期には年間1,000万人のスキー目的の観光客が押し寄せるようになったのです。その時代、首都圏からの観光客があまりにも多かったため、湯沢町は「東京都湯沢町」という異名を持つほどになりました。

時は空前の好景気。スキーのために湯沢町を頻繁に訪れる人たちの需要に応え、湯沢町にはリゾートマンションが大量に建設されました。何と、隣接する南魚沼市と合わせると合計63棟のマンションが建設されたのです。 しかし、スキーブームの終焉、バブル経済の崩壊、そして失われた20年と呼ばれる不景気の到来により、情勢は一気に変わってしまいます。かつて大挙して押し寄せていた観光客は半分以下になり、大量に作られたリゾートマンションたちは次々と手放されてしまったのです。

その結果、2019年の今、温泉大浴場やサウナ、スポーツジム、プールなど現在のタワーマンションで見られるような豪華設備を備えたリゾートマンションが破格値で大量に流通しているのです。その結果、築28年の2LDKが10万円で売られているという、「中古マンション」の概念を大きく覆す状況が生まれています。

新潟県湯沢町の例は全国的にも有名になるほどの極端な例ですが、日本全国に存在するこのような「リゾートマンション」の多くは、完成当時からは考えられないほどの破格値で売りに出されています。

なぜ安いのか

リゾートマンションが安い理由は、需要があまりにも低すぎることです。景気後退の影響もあってか、リゾート地にセカンドハウスを購入するという人が減り、多くのリゾートマンションは入居者が非常に少ない状態になっています。

リゾートマンションの多くは、人里離れたリゾート地(田舎)に作られているため、商業施設や病院、学校などあらゆるものから遠く、利便性が悪い物件がほとんど。退職後に定住するという人が住むことも難しいと言えます。さらに、マンションと言う名前ではあるものの、部屋そのものの作りも短期間の滞在を目的とした作りになっており、室内洗濯機置き場やバルコニーがない物件が多いのです。

そのため、破格値で売りに出したとしても長い間売れない状態が続き、売主は早く手放したい一心で、まるで1ヶ月分の家賃と見紛うような値段で売りに出しているのです。

高い管理費

リゾートマンションを破格値で売りに出している人は、なぜそんなに物件を手放したいのでしょうか。その理由は、豪華な設備を備えたリゾートマンションならではの高額な管理費。今の時代のタワーマンションでも、プールやスポーツジムなどの高額な設備の維持費(=高い管理費)が問題化していますが、入居者がそもそも少なくなっているリゾートマンションは1世帯あたりの管理費、そして修繕積立金の負担が大きくなってしまいます。

仮に10万円の物件を購入したとしても、管理費が1ヶ月で3~7万円になることもあるというリゾートマンション。仮に3万円で済んだとしても1年所有するだけで36万円もの維持費がかかってしまうのです。

気軽に手を出してはいけない

建物は維持管理が必要なもの。そして比較的早く老朽化してしまいます。「定住はせず、夏休みや冬休みの間だけ住む別荘」としてリゾートマンションを購入すると、高額な維持費に驚くことになってしまうでしょう。

さらに、将来的にそのリゾート地に飽きてしまうなどの理由でマンションを手放そうにも、買い手が絶望的に少ないためなかなか売ることができません。一年のうちほとんど利用しない、という状況では、リゾートマンションはただの負債となってしまうのです。