2021.11.04

バリアフリー住宅とは?設計ポイント、道具の種類、工夫のいる場所を分かりやすく解説

建てる

高齢化が進むにつれて、バリアフリー住宅の重要性は増すばかり。高齢者と一緒に住まわれている方や将来のためにリフォームを考えている方の中には、バリアフリー住宅を検討される方も多いのではないでしょうか。

そんなバリアフリー住宅の設計ポイントをバリアフリー化が必要な場所ごとに分かりやすく解説します。役に立つ道具の種類や工夫のポイントなどもご紹介しますので、みんなが気持ちよく過ごせる住宅設計の参考にしてみてください。

バリアフリー住宅とは

高齢者、障がい者にとって、精神的、物理的な障害(バリア)がなく生活しやすい社会や空間。または、そのような社会や空間をつくるための考え方、設計方法を意味します。この考え方を導入し、主に物理的な障害を除くために、床の段差を解消したり、手摺りを設置したり、基本生活空間の配置をした住宅のことを、「バリアフリー住宅」といいます。

バリアフリーとユニバーサルデザインって何が違うの?

バリアフリーとよく混同されがちなのが「ユニバーサルデザイン」。その違いは以下の点で異なります。

バリアフリー
対象者は主に高齢者と障がい者になります。施設や住宅の設計では、対象者の使いやすい街づくり、家づくりを行なって生活の上で障壁(バリア)を除去する意味合いがあります。例として、玄関前にある段差にスロープを付けたり、トイレの介護スペースを確保するなどが挙げられますが、広義としては、障がい者の社会参加に対する心理的な障壁の除去という意味でも用いられます。

ユニバーサルデザイン
バリアフリーは、障害によってもたらされるバリア(障壁)に対処するという考え方であるのに対して、ユニバーサルデザインはあらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種などに関わらず、多様な人々が生活しやすい都市や生活環境をデザインする考え方です。例えば、設計時点からスロープを計画しつくりあげることなどを指します。

すべての生活者・利用者の視点に立ってデザインが考えられるため、妊婦の方、子ども及び子ども連れの人なども対象となるわけですね。

交通事故よりも多い家庭内の事故

厚生労働省「人口動態調査」における高齢者の死亡事故者数を見ると、平成22年以降、毎年30,000人以上の方が「不慮の事故」で亡くなられています。また、自然災害、交通事故を除いた不慮の事故では家庭内の「転倒・転落」、「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数が、交通事故よりも多くなっているのです。

「出典:厚生労働省 人口動態調査における高齢者の事故の状況について

こうした家庭内における不慮の事故は、浴室が最も多く発生していて、次いで、転倒事故が多発する階段や段差のある場所などが挙げられます。

バリアフリーの工夫が必要な場所

上記でも述べたように、身の回りにはバリアフリー化が必要な場所が多く存在します。それでは、どんな場所にバリアフリーの工夫が必要なのか見ていきましょう。

浴室

高齢者や障がい者の方にとって一般的なユニットバスは以下のような危険なポイントがあげられます。

・浴室の洗い場の段差につまずく
・浴槽の出入りの際、高さがあって転倒しやすい
・床が濡れて滑りやすい
・排水溝の形状によっては車椅子の車輪がはまりやすい
・浴槽が深くて溺れる危険性がある

トイレ

一般的なトイレでは、以下のようなことが事故の原因になることがあります。

・体調不良でトイレの中に倒れた際、閉じ込められる
・トイレが狭く、介護が必要な方の介護スペースがとれていない
・出入り、しゃがむなどの行為で転倒してしまう

階段

一戸建ての暮らしでは、ほぼ毎日利用する階段。足腰が弱ってしまう高齢者にとって上り下りは転落・転倒につながる恐れがあります。

・階段の踏板で滑って転倒してしまう
・万が一、階段から転落したときに一番下まで落ちて大怪我につながる
・視力の低下によって踏み面を認識しづらくなる

廊下

毎日、室内を移動するときに通る廊下も、バリアフリー化が必要な場所です。廊下では以下のような工夫が必要となります。

・視認性の低下によって転倒や激突しやすい
・段差や滑りによる転倒のおそれ
・歩行の際にグラついてつまずいてしまう

バリアフリー住宅の設計ポイント

長く快適に住み続けるために、身体が弱ってきても使いやすい仕様にしておくことが大切です。それでは、場所ごとにどのようなバリアフリー設計を施せばいいのか具体的にご紹介します。

浴室の設計ポイント

段差の解消で転倒を防ぐ

浴室の出入り口は、シャワーや浴槽の水が脱衣所に流れ込まないよう、段差がつけられています。バリアフリー化には、こうした段差をフラットに設計することが理想です。

また、跨いで出入りする浴槽への移動も転倒の原因となります。こうした転倒防止には、介護補助用にさまざまな種類の道具が販売されています。コスト面を抑えることもできるので、上手く取り入れてみるのもおすすめです。

すのこ・・・浴室の洗い場に敷くと段差解消になる
足台・・・浴槽の中、または浴槽の中と外に設け、浴槽の出入り用のステップ台にする
移乗台・・・浴室用介護補助具。浴槽の外側にエプロン(浴槽の縁)の高さで設け、浴槽へ の出入りの際にいったん腰を掛けるための台。

扉の開口幅を広くとる

古い浴室によく見られるのが、扉が押し戸になっているものです。押し戸は開閉に力が必要なので、握力の弱った方にとっては開けるのが難しいだけでなくバランスを崩しやすいため、転倒にもつながる危険性があります。

扉は引き戸にするか、車椅子利用者には開口幅を広くとれる3枚引き戸が適しています。

ヒートショック対策

寒い季節は、室内外の急激な温度差によって心臓や血管に負荷がかかるヒートショックが起りやすくなります。冬季のヒートショックの危険を避けるため、浴室と洗面脱衣所に暖房器具を設置することでやわらぐことができます。

トイレの設計ポイント

外から鍵が開けられる工夫を施す

トイレの中で転倒してしまったり、体調不良になってしまったりすることがあります。そんな時でも、外から鍵を開けれる仕様にしておけば、すぐに救助することができます。

手すりをつける

バリアフリー計画において、手すりは各所に設置されることが推奨されています。トイレでは出入口から便器の真横までL字の手すりを設置すると、出入りや便座からの立ち上がりまでの移動を支えてくれます。また、手すりは大人が握りやすいように、外径35mm程度が望ましいとされています。

トイレの介助スペースをとる

介助者は便器横か斜めに立って介護するため、介助スペースとして有効幅500mm以上を確保できるようにすることが望ましいです。

階段の設計ポイント

滑り止めを設ける

階段には安全のため、段板の先端(段鼻)に滑り止めのための材、「ノンスリップ」を付けたりマットを敷くことで、滑りや転倒の危険性をやわらげることができます。

転落の被害を軽減する階段設計にする

万が一、階段での転倒事故があった場合、被害の軽減を考慮して折り返し階段にすると、下まで転げ落ちないというメリットがあります。折り返し階段は長さを十分にとれるので、勾配を緩やかにすることもできます。

手すりをつける

住宅の中で勾配のある階段には手すりを設けなければいけません。手すりは円形断面のものが握りやすく、その直径は35㎜程度が適切な太さとされています。壁面に設置する場合は、指が壁に接触しないように壁面と手すりの間を40㎜程度離します。

廊下の設計ポイント

夜間の足元を照らす照明計画

高齢者は視機能が低下するので、照明に際してはJIS規格に示された推奨の照度の数倍の明るさにするのが望ましいとされています。電灯が消えている暗所で所在を知らせるために表示ランプが光る「ほたるスイッチ」の設置がおすすめです。ランプにはLEDが使用されているので、長い目で見て経済的でもあります。

転倒しても安全な床材を使用する

転倒時の安全を考慮して、床材には次のような種類のものを選びましょう。

・コルク
・ビニル系
・カーペット


いずれも足を滑らせにくく、もし、転倒してしまった場合でもクッション性があるのでケガをしにくくなります。コルクタイルは歩行感、断熱性、吸音性、肌ざわりに優れ、床暖房の床材としても適しています。

移動にスムーズな手すりの設置

各部屋を移動しやすいよう、手すりを設置するのもバリアフリー化の設計で重要なポイントです。その設置基準は、直径28~40mmの円形断面を持つ握り、手すりと壁のあき寸法が30~50㎜、設置高さは床から750mmが推奨されています。

また、移動のために手を添える程度の場合はバランスがとりやすいやや太いサイズに設計すると良いでしょう。


 

将来的に安全なバリアフリーのある暮らし

高齢者や障がい者だけでなく、子どもや妊婦さんまで家族みんなが安心に暮らせるのがバリアフリー設計のある暮らしです。どういったバリアフリー化が必要になるかは各ご家庭によって変わってくると思います。家族でしっかり話し合って、納得のいくバリアフリー設計を考えてみましょう。